白と黒

7/13
前へ
/13ページ
次へ
幸福感を得たふわりとした暖かい夢から、ずっしりと重い鉄の様な冷たさに変わった記憶の苦痛で、私は再び目が覚めた。     横たわった私は空腹と疲れでもう動く事も出来ない。 遥か遠くにあるパパとママも見ているはずの太陽が 深緑の山林の中を焼ける様にじわじわ真っ赤に染めていく。 ......ああ、日が落ちる。 太陽が落ちる前ってこんな風にすごく赤くなるんだね。 ........体はもう擦り傷だらけ。痛い。     変な虫にも刺されたよ。痒いよ。      ああ。ママ、パパ。会いたいよ。       どこに、行ってしまったの?............ ふと出発前のママの言葉が脳裏に浮かぶ。 「黒百合が生えてそうな場所、そんな山奥なの?じゃあ人気(ひとけ)なんてないわよね。...........丁度いいじゃない。」 眠るアイツを抱きながらママはそう言い私の方をチラリと見た。そして..........とても、        とても小さな声で......笑った気がした...... そうか、また私は捨てられたんだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加