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幸福感を得たふわりとした暖かい夢から、ずっしりと重い鉄の様な冷たさに変わった記憶の苦痛で、私は再び目が覚めた。
横たわった私は空腹と疲れでもう動く事も出来ない。
遥か遠くにあるパパとママも見ているはずの太陽が
深緑の山林の中を焼ける様にじわじわ真っ赤に染めていく。
......ああ、日が落ちる。
太陽が落ちる前ってこんな風にすごく赤くなるんだね。
........体はもう擦り傷だらけ。痛い。
変な虫にも刺されたよ。痒いよ。
ああ。ママ、パパ。会いたいよ。
どこに、行ってしまったの?............
ふと出発前のママの言葉が脳裏に浮かぶ。
「黒百合が生えてそうな場所、そんな山奥なの?じゃあ人気なんてないわよね。...........丁度いいじゃない。」
眠るアイツを抱きながらママはそう言い私の方をチラリと見た。そして..........とても、
とても小さな声で......笑った気がした......
そうか、また私は捨てられたんだ。
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