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......アイツのせいだ。
密林の隙間から覗く茜色に染まりつつある空を見上げながら私は嘆いた。この地方の2月の夜は氷点下。夜が更けていくと共に体温はみるみるうちに奪われ、私は朝を迎える事は出来ないだろう。
だが徒歩で日が落ちる前にふもとまで辿りつく事はまず無理だ。車は確かかなり長い間、クネクネと曲がりくねった山道を走っていた筈。
.......ああ、あの時私は暖かいシーツをかけてもらってウトウトと居眠りをしていたんだっけ。
「2月に咲く幻の黒百合があるらしい。」
パパが目を輝かせながらママに言った。
どうも何処かの山の上でひっそりと隠れる様に咲いていて、黒紫の花弁がキラキラと七色に光るらしいのだと。
最初はママは少し困った顔をして探しに行くのは無理だと言った。でも、あまりにもパパが懸命に訴えるのでとうとう重い腰を上げたんだ。
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