51人が本棚に入れています
本棚に追加
「何してんの」
「えっと、その、よかったら使ってください」
「あんたが濡れるじゃん。もう手遅れだし」
濡れた服を見せるようにして言う。しかしそんなことを言われて、はいそうですかと引き下がるのも気分が悪い。
「私の家はすぐそこなので」
そのまま傘を渡して立ち去るつもりだったが、男は「ふーん」と言って私の手の上から傘を持った。
「じゃあ俺も行く」
「え?」
目を丸くする私から傘を奪い、「どっち?」と言いながら私の方に傘を傾ける。送ってくれるということだろうか。経験したことのない事態に困惑しながら、結局私は家まで彼と並んで歩いてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!