プロローグ

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 目を開けて彼を見ると、先程の無表情はどこへやら。捨てられた子犬のような目で私を見ていた。 「うっ……今夜だけ、ですよ」 「ありがとう」  いい人だね、お姉さん。わずかに口角を上げて、彼はそのまま部屋に入っていく。慌てて追いかけると、突然止まった背中にぶつかりそうになった。 「風呂どこ?」 「え? あ、そっちです」  思わず返事をして、風呂場に消えていく彼を見送ってしまった。
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