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序章
「妖」
それは、古くから日本で伝承されている謎多き存在である。
彼らは、人、動物、物など様々な姿をしており本当の姿を知る者は誰もいない。
人々は妖を「神」、または「魔物」呼んでいた。
平安時代、そんな妖達を封じる者がいた。
人々は、最初に「陰陽師」と思い浮かべるだろう。
彼らは、式神や呪術を使って妖に対抗していたという諸説が多く取り上げられている。
ある諸説には、八岐大蛇という妖が都を襲う伝説が記されていた。
実力ある陰陽師達は、八岐大蛇を封じ込めようと悪戦苦闘する。
だが、どんなに攻撃しても妖に効果はなかった。
すると、そんな彼らの前にある人物が現れる。
名を雨羽雷郷。
日本各地を旅するごく普通の絵師の青年だった。
雷郷は、目の前の八岐大蛇に怯むことなくその妖の姿を紙に絵を描き、あっという間に絵の中に妖を封じたのだ。
陰陽師達は驚いた。
自分達のように式神や術を使うわけではなく、絵で妖を封じた人物を見るのは初めてだったから。
だが、陰陽師達は絵師の存在を公に出すことは無かった。
相手はただの絵師。
気味の悪い術を使う者は、歴史の表舞台に出す必要は無いと判断されたからだ。
そして、妖を封じた雷郷も英雄と名乗ることを拒み再びその場を去った。
都に平和が訪れた後も、そんな術に恐れた陰陽師達の間で彼はこう呼ばれていた。
「妖絵師」と。
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