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chapter1
ーーー音声を再生します。
…よし。
ちゃんと録れてるわね。
えっと…こうして改めて話をするのは緊張するけど、大切な話だからお姉ちゃん頑張ります。
アヤトへ。
あなたがこのメッセージを聞く頃には、お姉ちゃんはあなたの近くにはいないと思います。
最悪の想像はしたくないし、本当は何時までもあなたの傍にいたいけど、それが無理なのはお姉ちゃんが一番解っています。
人間は、いつか必ず別れを経験しなければならないの。
親子も、友達も、姉弟も、それは変わらないわ。
そんなことばっかり平等なんだから、本当に神様は意地が悪いよね。
だから、お姉ちゃんは神様に喧嘩を売ります。
お姉ちゃんが意地っ張りで、負けず嫌いなのは、アヤトも知ってるよね?
このまま、素直にお別れなんてしたくありません。
お別れするのは百歩譲って仕方がないとしても、何も残さずにいなくなることなんて出来ない。
だって、悔しいじゃない。
わたしが生きた痕跡が、証が、わたしがいなくなるだけで消えるなんて。
だから、お姉ちゃんの全てをアヤトへ遺します。
わたしが今まで培ってきた全て。
わたしが生きてきた証を、貴方に。
大丈夫。
何も怖いことはないわ。
お姉ちゃんの全ては、あなたの為にあるの。
思えばずっとそうだったわ。
アヤトこそが、わたしの全て。
あなたの為にわたしは生きてきたの。
…本当はね、お別れなんてしたくないわ。
あなたの傍にずっといたい。
あなたと共に、生きていきたい。
アヤト、わたしの可愛い弟。
例え世界が滅んでも、あなたが笑っていればそれでいい。
…それが、わたしの最後の願いです。
ーー音声を終了します。
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