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ブラインドから射し込む光を受けて、アマキリ・アヤトは目を覚ました。
ベッドから身体を起こし、軽く全身を揺らしてストレッチをする。
体調は悪くないが、身体と心がだるい。
きっと疲れが残っているのだろう。
アヤトは再びベッドへ身体を倒した。
まだ朝は早い。早起きで得する三文よりも、惰眠による疲労回復をアヤトは選択した。
「アヤト、起きてるかい?」
ノックの音が響き、アヤトは再び眠気を散らされた。
ドアを開けて入ってきたのは、一人の男だった。
大きな腹をした肥満体型で、ぎょろりとした目と尖った口が魚類を連想させる。まるで、服を着た半魚人だ。
しかし、どこか愛嬌があり、穏やかな雰囲気を体に纏わせていた。
「おはようアヤト。その様子じゃ、二度寝の真っ最中だったようだね」
「…ちょっと違うよ、ギレルモくん。正しくは二度寝しようとした所さ」
明らかに寝惚けたアヤトの表情に、ギレルモと呼ばれた男は溜め息を吐いた。
彼の名はギレルモ・タグチ。
アヤトの学生時代からの友人であり、彼に寝所を提供している家主でもある。
ネット上に連載を持つコミックライターで、コメディから社会風刺まで幅広いジャンルで活動している。
一見すると、ぎょろついた目と人間離れした風貌が不気味な印象を与えるが、穏やかで優しい性格をしたアヤトの親友である。
「起きたなら降りておいで。君の相棒がお待ちだよ」
「相棒…ねぇ」
アヤトはベッドに座ると、真剣な眼差しでギレルモを見つめた。
「ねぇギレルモくん。本当の相棒って、どんなものだと思う?」
突然の質問に、ギレルモは肩をすくめた。
「いきなり何を言ってるんだい?寝惚けてるなら顔を洗ってきなよ」
「いや、僕はいたって真面目だよ」
アヤトは真面目な表情を作り、言った。
それでもかなり無理をしているようで、既に目尻の端が垂れかけている。
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