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ドタキャン魔への逆襲
また――ドタキャン。
『後輩たちに勉強教えてくれって泣きつかれてな』
なに嬉しそうにしちゃってんだか。
「バッカじゃねえの……」
お人好しの大バカやろう。
ごめんくらい言ってから電話切れってんだよ。
俺がなにも言わないからって好き勝手しやがって。
ホントは、俺だって。
俺だって言いたいこといっぱいあんだ、バカやろう!
***
ピンポーン。
荒い鼻息が治まる前に、柏原家のチャイムを押した。
ここで後輩とか後輩とか後輩とかがうっかり顔出しやがったりしたら、思いっきり殴ってやる――光を。
「はーい……あれ、海斗先輩?」
うわ、柏原妹だった。
これはこれで、なんだか非常に気まずい。
俺、寝癖ばっちりついたままだし。
「桜ちゃん、光いる?」
「部屋で勉強してるよ」
「じゃ、おじゃま」
桜ちゃんが、もしかして兄貴またドタキャンしたの、って同情してくれた。
なんだよ、妹公認のドタキャン魔かよ。
最低じゃねえか!
「ん? 海斗じゃないか。どうした?」
靴を脱いで柏原家に上がったところで、光が階段を下りてきた。
どうした、だって?
どうしたもこうしたも、お前のせいで俺ははるばるここに来ることになったんだろうが!
「光、俺はお前に言いたいことがある!」
「まあ、上がれよ。お前も一緒に勉強するだろ?」
勉強なんてするか!
ああ、もう!
俺はそんなことのために来たわけじゃないんだよ!
「光! 俺はもうお前なんか、大嫌いだからな!」
「なに……?」
「いっつもいっつも、後輩後輩後輩後輩後輩って!」
「海斗……?」
「もう、お前とは別れる!」
ぎゅうっと光に抱きついた。
やばい。
落ち着く。
厚い胸板に、広い背中。
俺が大好きな光だ。
「おい、海斗……?」
「なんだよ」
「お前、言ってることとやってることがハチャメチャだぞ?」
光のばか。
俺の言いたいことに、気付けよ。
この、鈍感色男め。
「たまには、俺のことも大事にしろ……ばか」
そうだ。
いくら俺だからって、あんまり放ったらかしにしておくと爆発するんだからな。
今日みたいに。
「悪かった」
「……ん」
「いつも大事にしてるつもりだったんだが」
「足りない」
「そうみたいだな」
笑ってんじゃないっての。
余裕かましやがって。
俺がガキに見えるだろ!
「なあ、海斗」
「……なにさ」
「お前も、一緒に勉強してくだろ?」
だーかーら!
ああ、もおぉぉぉッ!
「するに決まってんだろ!」
fin
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