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「あ、彼女は、大学が一緒で一番仲が良かったんです。それまで、ケンカなんてほとんどしたことが無くて。彼とは勿論別れて、冷静になると、私なんてこと言っちゃったんだろうって。でも、どうやって謝ったらいいかわからなくて……」
すみれは、当時を思い出しているのか、きれいな服装に似合わない暗い表情を見せた。しかし、すぐに明るい表情に変わった。
「でも、昨日、連絡が来たんです!彼女の方から。私の誕生日だから、会いたいって」
「良かったですね」
「はい」
ふふっ、とすみれが笑みをこぼす。
「今日、駅で会った時、二人とも第一声が『ごめん!』だったんですよ。もうドラマか、ってくらいぴったりハモっちゃって」
マスターが、残り少ない、冷めたすみれの珈琲を温かいものと取り換える。
「その後は、この半年は何だったんだってくらい、元通りで。いつも通りで楽しくて……」
すみれの話を聞く限り、ついさっきまでその友人と一緒だったようだ。しかし、すみれは一人でこの店に入って来た。
「さっき、『友達はあとから来るんですか』って、聞かれましたよね?」
「ええ」
すみれは目を伏せ、珈琲を見つめる。
「待ってますよ。でも、来なければいいなーって、思ってます」
何とも言えない寂しげな、憂いているような表情を浮かべるすみれ。
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