59人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしが肉じゃがをせっせと作っている後ろで、迅くんは邪魔にならないように炊飯器のセットをしたり、お皿の準備をしてくれている。
「何作ってるの?」
やることがなくなったのか、迅くんはわたしの肩越しに鍋を覗き込む。
「鶏肉じゃが!」
わたしが元気よく答えると、ほほう、と返事があった。
「いいにおい」
そう言って迅くんはわたしの首筋を鼻先でちょんとつついた。
「早く、食べたい」
「……もうちょっとでできるから、待ってて」
迅くんはわかった、と言うと、わたしの頬にキスをしてから離れていった。
「火のそばにいると、熱いなあ」
顔の火照りを誤魔化すように呟くと、迅くんのくっくっという笑い声が後ろから聞こえた。
じゃがいもとにんじんが柔らかくなるのを待っている間に、水菜をザクザクと切る。わたしが作るドレッシングが好きだと迅くんが前に言ってくれたのだ。
白だしとお酢とごま油を混ぜて、刻んだ鷹の爪を投入する。味見をして、お酢を少し足す。満足する味に仕上がった。これで迅くんの笑顔は確定だ。
鼻歌を歌いながらじゃがいもの煮え具合を確認する。
ちょうどいい。
炊飯器から音楽が流れ、ごはんもちょうど炊きあがったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!