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会計を済ませ、わたしはスキップしながら家路を進む。
わたしの料理を食べて、おいしいって笑ってくれる迅くんを想像すると、ふふふと笑みが漏れる。
玄関の前に立ち、鍵を開けようとした瞬間、違和感があった。
あ、れ? あれれ? 帰ってきてる?
恐る恐るドアを開けると、家の中は明るい。
「……ただいま」
キッチンに向かう後ろ姿に声をかけると、迅くんは振り返って、おかえり、と返事をしてくれた。
「えええ、どうして」
わたしは動揺と落胆を声に出してしまった。迅くんはじゃがいもの皮をむきながら、どしたの、と言った。
「今日は、わたしがご飯作ろうと思ってたのに」
迅くんはわたしの買い物袋に目を落とした。
「じゃ、お願いしよっかな。まだ皮むきしかしてないから」
そう言って、じゃがいもの皮むきを終わらせた迅くんは、手を洗った。そして、わたしの買い物袋の中を覗くと、あ、と声を漏らした。
「いちご。俺も買っちゃった。おいしそうだったよね」
「そうだねぇ。あれは買っちゃうよね」
いつもよりちょっと値段が抑えめで、小ぶりだけど真っ赤ないちごがたくさん入ったパックは、わたしの目を引き付けて離さなかったもの。
「しばらくいちごに困らないな」
迅くんはそう言いながらいちごを冷蔵庫にしまった。
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