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「別れましょう、私たち」
桜が見頃を迎えた京都の嵐山で、私はずっと抱え込んでいた言葉を吐き出す。
一日中遊び回った私たちは、綺麗な夜景が見える料亭にて美味しい懐石料理を堪能していた。
「今生の別れか……?」
目の前に座っているのは腐れ縁の関係である、想士という名の男。彼は優しそうなたれ目を瞬かせた。
周りの客から、「あんな優男を振るなんてもったいない」「彼女の方もなかなかの美人じゃないか」等というヒソヒソ声が聞こえてくる。
私としては、変化してばかりでくだらない外見などというものはどうだって良いの。
「いいえ、永遠のお別れよ!」
決意の固さを、はっきりとした声で言い表す。しかし、
「だって、どうしたって、あなたが先に死んでしまうもの……」
だんだんと喉の奥が熱くなり、しまいには蚊の鳴くような声しか出なくなってしまった。
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