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風呂から上がりリビングへ戻ると、宮部の姿が見当たらない。買い物にでも出たかなと思い、テレビを見ながら待つ事にした。いくつかチャンネルを回しても面白い番組はなく、無難なニュース番組にしたものの、ものの五分で眠気に襲われた。
大きなあくびをひとつしてソファへ横になると途端に瞼が重くなり、数分もたたないうちに三上は寝息を立て始めた。
唇に、柔らかな感触。三上が瞼を押し上げると、目の前に宮部の顔があった。瞬きを二回して、寝ぼけた思考をぐるりと巡らせた後、行き着いた答えを口にする。
「宮部、キスした?」
途端に宮部の瞳が真赤に潤みだし、すみませんと声をあげた。逃げ出しかけた宮部の左腕を掴み、引き寄せる。
「何で逃げるんだ」
「す、すみません、僕……ほんとにすみません」
身体を震わせ俯く宮部の顎を引き上げると、頬は紅潮し、怯えたように両目を瞑っていた。
「俺の事が好きなのか」
「えっ……」
宮部の身体をゆっくりと床に押し倒し、四肢を押さえ込み、宮部のずれた眼鏡を優しく外してから、もう一度訊ねる。
「宮部は、俺の事が好きなのか」
とたんに宮部の両目から涙が溢れ、零れ落ちた。
「す、好きです……ごめんなさい」
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