Hakoniwa

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 新年会は大衆居酒屋の大広間で始まった。  出勤初日だというのに、二、三十名は集まっているだろうか。予想よりも大人数で、三上は改めてげんなりした。それでもなるべく動かずにいられるように一番奥角の席を陣取り、近辺の社員とだけ軽く言葉を交わしながら、無難にひっそりと酒を飲んで過ごしていたのだが。  三上がトイレから戻ると、奥角の席は奪われていた。席をはずせば同じ場所へは戻れなくなる。毎度の事だ。渋々空いている席を探していると、後方から女性社員達に名前を呼ばれた。 「三上係長、こっち空いてますよ~」  振り返ると管理部の女性社員達が卓を囲み、自分に向かって手招きをしている。面倒だと思いつつも、他に座れそうな場所も見当たらないので召集に応じると、あっという間に包囲された。 「やった、三上係長、捕獲~」  ひとを狩猟動物のようにいうな。  普段仕事であまり絡む事のない管理部だが、男だらけの営業部とは毛色が違い、女性枠が多く、更には半数以上が古株で権力が強いと評判だ。美人揃いだが下手に関わるのは危険だと、歴代の先輩達から語り継がれている。  三上は女性に関して苦手程ではないが、興味はない。中学時代に女子生徒から告白されて付き合った経験はあるが、全く性的感情が沸かず、すぐに別れた。  自分が他の男子と違うと確信したのは、高校一年の時だった。  当時水泳部に所属していた三上は、シャワー室で憧れの先輩の裸を見た直後、勃起した。自分はゲイであると自覚した後の思春期は、辛い時期だった。  誰に打ち明ける事も出来ず、感情を押し殺し、部活と勉強に集中する事で理性を保っていた。一刻も早く地元から抜け出したい、その一心で都内の大学を受験し、合格後すぐに上京した。もう十年も昔の話だ。 「三上くん、そろそろ結婚は? 彼女いるでしょ」
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