ドラゴンの吐息

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エピローグ☆意外とまとも? 「こっちが、ギャンブルのおいちゃん。こっちが手芸関連ドンと来いのかよこさん。こっちが陽気なてかちゃん・・・」 紹介されていくうちに、尚美はなんだかこの人たち知ってるぞと思っていた。 母親が失踪して、父親のヒロツグと二人暮しになった頃。尚美が物心ついたかどうかの頃。彼らは確かに尚美に付き添って、いろんなことを習得させたのだ。それはある意味冒険だった。 冒険といっても日常の中の些事だったが、確かに今の尚美の人格形成に一役買っていた。 「あんな子がいるよ、ってナオのこと話したら、みんな興味持っちゃってね」 「私は…」 「私は?」 「恩は感じるけど、だからってこっちの世界には来たくないなぁ」 連中は顔を見合わせた。 「しょうがないね。こっちからまたそっちに遊びに行くから、こちらへは呼ばないようになるべくするよ」 「よかった…」 「尚美、安心するのはまだ早いぞ。お前を嫁にもらおうと思ってるやつも紛れ込んでるからな」 「えっ!」 ドラゴンは顔を掻きながら、ギラリと何人かを睨んだ。確かに紛れ込んでる奴らはのらりくらりとして知らんぷりしている。 「普通の結婚出来ない〜」 と、尚美が嘆いていると、 「普通の結婚した後でいいよ!」 と、口々に言われた。 「そんなのありか!?」 「どーせ俺ら時間の流れかたが違うし」 「まさかと思うけど、私の母さん、そんな感じで無理矢理連れ去ったんじゃないでしょうね?」 「ナオのお母さんは自分の意思で、白い花の木の家にいるよ」 「それどこ?」 「ごめん!この世界では常に入れ換わりが起きてるからどこだってはっきり教えられないんだ」 「母さんは元気なの?」 「この前見たときは幸せそうだったよ」 「…そう」 尚美はドラゴンを見上げた。 「とりあえず、無事がわかっただけでも俺はいいよ」 「そうか。そうね」 「現実に戻ろうか?」 「…うん」 ごおおおおお。 ドラゴンが大きな吐息をはいた。 「お父さん!」 「なんだ?」 「・・・なんでもない」 「あのな、人生は長いんだ」 「だから?」 「どんな可能性だってある」 「まだ見てないものややってないことが五万とある」 「そう。わかってるならそれでいいよ」 今回みたいなことは、まず起きないと思っていたから、ちょっとびっくりしたんだよな、と尚美は吐息をはいた。 「そういえば、昔見た女神の采配ってどんなのだったの?」 ふと疑問に思ってヒロツグに聞いた。 「何もかもライバル同士の男たちの前に現れて、片方を選んだんだよ」 「?」 「選ばれたのは俺で、選んだのは母さん!」 「何それ!」 「生まれたのはお前!」 あは、あはははは。 尚美は朗らかに笑った。
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