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第一章☆闇からのアクセス
真夜中。
尚美はぱっちり目を開いて、ベッドから抜け出た。
おかしい。
いくら夜中だからといって、この沈黙はなんだろう?
やがて、近所の建物が渦巻きに巻き込まれ始めた。
その様子を尚美は窓からこわごわ見つめていた。
こんなことがあり得るんだろうか?
不動産というくらい、どっしりとその場に動かないはずの建物の群れが、今渦巻いてゆく。そのどれにもいつもの人の気配は無く、大小様々な高さで中央へ向かって巻き込まれていく。
ウーウーウー!
けたたましいサイレンの音が響いて、ガタガタ揺れ始める。
直感で今、尚美以外この空間にいないことがわかる。
「父さん、私まで巻き込まないでってあんなに言ったのに・・・」
火だ!
渦巻きの中心から外側に向かって炎が燃え広がり、こちらへ迫ってくる。
逃げる?どこへ?
今自分がいる場所くらいしか安全な場所が思い当たらない。
ベッドに戻って布団を頭からかぶった。
しばしの沈黙。
「ここは暗いね」
人の気配。
布団の中で誰かがカンテラを灯した。
ゆらゆら揺れるかすかな灯りを頼りに、尚美は目をこらした。
一体、何が起こっているの?
「ナオ。ナーオ。こっちへおいで」
「いや!」
「火山が爆発するよ。火山弾に気をつけて」
「えっ?」
いつのまにか暗闇の空間をさまよっていた尚美は、足下を地響きが走るのを感じた。
これは夢?
でもなんてリアルなの?
頬の、うぶ毛がチリチリする。
「尚美」
「いや!」
「尚美!」
飛び起きると、父親がそこにいた。
部屋は何事も無かったかのように元のままだった。
「時々様子を見に来るよ」
「うわーん、お父さーん!」
尚美は父親にしがみついた。
これは、お父さんのせいなんかじゃない!もっと他の何かだ!
尚美はそれまでの考えを改めた。
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