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予定が押しているので、とりあえず無事が確認……いや、あれは無事と呼べるのか?受け答えがしっかりし過ぎているのも疑問だ。
全く分からないが、身体的には大丈夫そうだったので部屋から逃げるようにして出てきてしまった。
情けない限りだが、嫌われているのでアリサ的にも良いだろう。
「ローデリヒ殿下。奥方様のご容態はいかがでしたか?」
部屋の外で待機していた護衛騎士であるイーヴォに「安定した」と簡単に答え、脱ぎ渡していたジェストコールを受け取る。 深い紺色のそれには、権力者の象徴とも言っていいほどの金や銀糸の精緻な刺繍がされていた。
歩きながら着ていると、ひょっこりと侍従がローデリヒの顔色を伺うようにして見つめてくる。
まだ十代半ばの少女のような見た目の侍従に、ローデリヒは目で「どうした」と問うた。
「ローデリヒ様。もう奥方様に関わるのはおやめになっては?跡継ぎのご子息はもうおられるのですし」
「……そういう訳にはいかない。第一、あれは妊娠している」
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