思い出せない?

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思い出せない?

「ゼルマと申します。ジギルスムントからは話は聞いています。奥様の侍女長を務めております。これからもよろしくお願いしますね」 「こ、こちらこそよろしくお願いします……」  ジギルスムントさんと入れ替わるようにして入ってきたのは、白髪のおばあさん。  ちょっと小太りな所も、しわくちゃの顔をくしゃりと笑う所も、人懐こそうな雰囲気を出している。なんかいい人そう。 「ご懐妊おめでとうございます。ローデリヒ殿下もさぞお喜びでしょう」 「いや、そんなことは……」  子供が出来るような心当たりが一度しかない、とローデリヒさんは言っていた。  どう考えてもこれ歓迎ムードじゃないのは私でも分かる。 「……って、殿下?」  ローデリヒさんの呼称で引っかかった。ゼルマさんはニコニコと優しそうに笑っている。
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