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子供の落書きかな、と思ってその本を棚に戻し、他の本を手に取る。
またミミズがのたうち回っていた。
それを二回ほど繰り返して、私は深々と溜め息をつく。
もしかして、ミミズが苦しんだ跡みたいな字がこちらの標準語だったりしちゃうのだろうか……?
例えるなら英語の筆記体を更に崩しまくった感じなので、もしかしたらそんな言語があるのかもしれない。
背表紙まで焦げ茶色一面の本棚を見上げると、一冊だけ銀色の背表紙の薄めの本があった。それだけ異様に目立つ。
ギリギリ届きそうだったから、背伸びして手を伸ばす。私の手の甲に誰かの手が覆いかぶさった。
骨ばった、私より一回り以上大きい手。
私の手がすっぽり収まってしまう、男の人の手。
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