思い出せない?

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 気がついたらその手を振り払っていた。声なき悲鳴と共に。  手を振り払って、その人から距離を取る。少しだけよろめいたけれど、近くにいたゼルマさんが支えてくれた。 「……って、ローデリヒさん?!」  顔を上げるとローデリヒさんが眉間に皺を寄せて、私に振り払われた手を見ていた。  ……というか、手!手が触れちゃったんですけど!!  女子中、女子高学校育ちの私にとっては、年齢の近い男の人との接触だけで一大事件。明日友達に報告したいくらいの案件だ。相手はイケメンだし。 「……すまない。驚かせた」 「えっ、あっ、こちらこそごめんなさいっ!振り払っちゃって……!」 「いや、いい。こちらこそ不用意だった。……だが、危なっかしいから思わず手が出てしまった。貴女の身体は一人ではない。大事にしろ。ゼルマもいるのだし、もっと周囲を頼れ」
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