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「俺、実は、未来からきたんだ」 「え…?」 未来から、来た? 顔をあげると、悲しそうな表情が目に入った。眉毛を八の字にさせ、困った表情で、彼は静かに微笑む。無理して笑ってくれているのが目に見えて分かる。 私は、信じがたいその事実に何故か納得していた。普段の私だったら絶対に信じないだろう。だが、わかるのだ。 今ベッドで眠っている彼も、目の前にいる彼も、遥生だということを。 そこで私はあることあることに気が付き、未来の遥生と名乗る青年に聞く。 「ねえ、じゃあ遥生は目を覚ますってこと?」 彼が未来の遥生だというのならば、眠る遥生が目を覚ましたということになる。私は期待を込めた目で青年を見つめた。 だが、私の表情とは裏腹に彼は一瞬戸惑って悲しそうな表情を見せた。 「菜々…ごめんな。俺、事故にあってないんだ」
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