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「わかってるよ。お母さんは優しい。私のこと考えてくれてると思う。でも、そうじゃないって思うことの方が私には多いの。ただでさえそんな心境だったのに、今日思いっきり悪い方に傾いちゃった」 私は、あの化け物をみるような目をずっと忘れられないだろう。忘れようとしても、邪魔をしてくるだろう。自分に深い傷が出来たのは、確かなことだった。 「俺は、菜々が二人が仲良くなることを願ってたこと知ってたよ」 「…」 驚いた。何も返せない私に、彼は続ける。 「お前が良くなる、と思ってたんなら良くなるよ。絶対に。今は苦しいかもしれないけどな。いつか絶対に良くなる」 根拠はないけど、と彼は眉を下げた。体を前後に動かし、ブランコをゆっくりと動かす。彼は私の方は一切向かず、ずっと前を向いていた。 しんと静まり返る公園。私と遥生のじゃりじゃりと地面を擦る音だけが聞こえる。
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