プロローグ

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だけど、私にとってはその噂は嬉しいものだった。 だって―――――――。 自分でも頬が染まっていくのがわかる。寒いはずなのに少しずつ体が温まっていく。今、赤いのはきっと鼻だけじゃない。 これでは、トナカイどころか茹蛸と思われてしまいそう。 「だめ、浮かれるな」 彼は、優しい。 私は頭や肩に降り積もっていた雪を払った。そして、少しずつ歩みを速めた。 一歩ずつ歩幅が大きくなり、雪の上に力強い足跡を残す。 少しずつ、息が上がってくる。 雪が私に積もる前に、私は思い切り走った。 学校に遅刻するかもしれないから? それもある。 友達に会えるから? もちろん。 ひけ、ひけ。頬の赤み。 ひけ、ひけ。高揚する気持ち。
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