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目の前に遥生が立っていた。怒っているような、泣いているような不思議な表情で。 「…お前、またくだらないこと考えてるだろ…」 聞いたことのない低い声で発せられた言葉に、私は目を見開く。遥生は私の座るブランコの鎖を握りしめた。動けない私に、遥生は続ける。 「お前はお前でいいんだよ。辛かったんなら泣いていいんだよ。なんかあったらいつでも俺のことを呼べ。どこにいようが絶対来るよ。菜々を助けるよ」 「…」 「おばさんの言ったことは許せないことだ。信じれねぇくらいひどいことだ。お前は怒っていい。自分の意見を言っていい。反抗していい。だから、嫌な考えに押しつぶされるな…」 ぽたぽたと私の頬に雫が落ちてくる。それが遥生の涙だと気づくにはそう時間は要らない。遥生の瞳は、暗いし、隠れてるし、よく見えなかった。 でも、鎖を握る手は震えていた。
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