74人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚ましたのは、その時だった。けたたましいブレーキの音が脳内に響き渡り、無理矢理に現実へと引き戻される。
まるで怖い夢を見たかのような目覚めだった。
実際、思い出したくないほどの悪夢だ。
冬だというのに、汗をびっしょりとかき、涙がぼろぼろと頬を伝う。
あまりの気持ち悪さに起き上がろうとしたが、身体が重くて思い通りに動かなかった。
「…やっと、忘れられると思ったのに」
ベッドに座り込んだ遥生に、カーテンの隙間から光が差す。目覚まし時計に目を向けると、針は八時を指していた。
とりあえず顔を洗って着替えよう…と、のそのそと立ち上がり、洗面所へと向かう。そんな遥生の足に、カツンと昨日飲んだビールの缶が当たった。よく見れば、色んな所にビール缶が散乱している。こんなにいつ飲んだのだろうと自分でも驚くほどの缶の量に混乱した。
だが、確かに昨日の記憶がない。そして異常なほどに身体が重いのは、これも原因だろう。
顔を冷たい水でばしゃばしゃと洗うと、明らかに泣いたということが分かる顔が現れた。目元から鼻先まで真っ赤だ。まだ腫れなかっただけましだ、と自分に言い聞かせた。
着替えまで一通り終わらせた俺は、再びベッドの上に座り込んだ。顔を洗い終わってから時間はそんなにかかっていないものの、今日は大学に行く気になれなかった。
なぜ、あのタイミングであの頃の夢が出てきたのか。
深く考えるより先に身体が動いた。
最初のコメントを投稿しよう!