『パラレルワールド』

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桜が遠くへと離れていく。バスが動き出すと、目に映る情景を次々に変えていった。 乗客が乗ってきては、降りていく。それを数回繰り返している内に、バスの中は俺と二人の乗客だけになった。 市内に行くのに少ないのは本当に珍しい。そう思っていると、バスはすぐに目的地に着いた。 整理券と共に料金を支払う。車掌さんがマイク越しに「ありがとうございました〜」と言っているのを聞きながら降りた。 ここで降りる人はあまり多くない。学校がすぐ近くのバス停なので、生徒と近所の人くらいしか乗降しないのだ。ここから真っ直ぐ行けば、俺の母校だ。 遥生はハァと息を吐くと、真っ白になった息は上へと上がっていく。 あぁ、もうあれから街は少しずつ変わっているのに。 見慣れない家や店がぽつぽつと出来ているのを見て、そう思った。 バス停から真っ先に「あの場所」へと向かった。あの日を思い出しながら、なるべく再現しながら。 ハァッ……ハァ…… 走り出す。久しぶりに走るので、息が切れやすい。 あの日は学校で、遅刻ギリギリだった。菜々は俺のことを直前まで待っていてくれて、俺が追いかけたらすぐに追いついた。 走って走って走って…… たくさんの家を横切った。学校が徐々に見えてくる。 あの時と変わらない…。あそこで菜々が息を整えていた。 少しづつ、あの日と情景が重なる。 「!!」 遥生は目を見開いた。あの日の菜々が見えた気がしたのだ。瞬きをして再び同じ場所を見るが、やはり幻覚だったと思った。そこには誰もいなかった。
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