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「はあ…はあ…」
私は乱れる髪のことなど全く考えずに、一心不乱に走った。さっきは、寒くていつ氷になってしまうのかと心配だったけれど、もう寒さなんて感じない。
私は、この気持ちを、彼に伝えたい。
いつか。
「はぁ…はぁ…っ」
酸欠を迎え、私は力なく身体を丸めた。膝に手をついて、何度か大きく、深い呼吸を繰り返す。
少し疲れてしまった。そりゃそうだ。こんなに全力で走ったのは久しぶりだから。
学校はもう視界に入るところにあった。ほとんどの生徒はもう登校を終えているようだ。ポツポツと、走って校舎に入っていく同じ学校の人を見かける。
近くにあった電柱に手をついて息を整えていると、後ろからサクサクと足早に雪を踏む音が聞こえてきた。
「菜々!」
どきり、と心臓が跳ねる。私は急いで姿勢を戻し、乱れた髪を咄嗟に手櫛で整えた。
「良かったぁ。あぶね、お前ぎりぎりまで待ってたろ」
「バレてるじゃん」
私がギリギリまで待っていることに気がついていたから、走って追ってきてくれたのだろう。
遥生は私と目が合うと、真っ赤な鼻を啜りながらニカッと白い歯を見せた。
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