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遥生はかつて菜々と最後に話した場所で足を止めた。
この日、菜々はいなくなった。2人で走って、学校に向かった矢先、雪でスリップした車が突っ込んできた。目の前に真っ赤な血溜まりが広がる。意識をなくした後の事は覚えていない。
目が覚めたら、病院にいた。彼女はもう、いなくなっていた。
忘れかけていた記憶が頭の中で暴れている。目の前が少しずつ見えなくなってきた。
もう、忘れたいんだ。忘れたんだ。
菜々……
昨日、泣きながらどうしようも出来ず、アルコールに頼った自分を思い出した。
パラレルワールドがあれば、菜々は今隣にいるのだろうか。菜々は……いや、そんな事ありえない。菜々はいなくなったんだ。いないんだ。
頭の中がぐるぐると回る。目眩がする。
菜々……菜々……
『遥生』
ハッと我に帰り、振り返った。しかし、そこには誰もいない。
「菜々……いるのか……?」
もちろん、返事はない。幻聴だったのかもしれない。だが、菜々の声がした気がしたのだ。
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