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進む先々、一般人が入っていいような場所ではないことがわかる。案内されたのは、応接室と記された無機質な部屋だった。初めて見る病院の内側に、胸が驚きと混乱と好奇心で震えている。
「そこに座って」
皆川が指定する2人がけのソファに腰掛ける。皆川はポットに水を入れてお湯を沸かしている。彼の横にはコーヒーカップとコーヒーのスティックが置かれていた。
遥生は、手馴れた作業をこなす皆川の後ろ姿を眺める。
「君はコーヒーを飲めるかい?」
「あ、ブラックはちょっと飲めないです」
「はは、君もまだまだ子供だね」
先生は小さく笑うと、俺のために準備してくれているコーヒーだろう、カップの横にミルクを付け足した。
ポットが呼ぶまでまだ時間がかかるようだ。皆川は、遥生の正面のソファに腰を下ろす。
遥生は皆川が待っているような返答ができる自信がなかった。何を聞かれるのかとどきどきしながら、皆川の言葉を待つ。
「須賀くん。さっきの話だが…どうして君は永井菜々を探していたんだい?」
あぁ、なんて答えれば…。
正直頭を抱えたい気分だ。ほんとに、なんて答えればいいのか分からない。
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