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「そうだね。そして、今日君はここへ導かれるように来た。これはただの偶然かな?」
偶然、だとしか考えようがない。彼女はもう死んでいるのだ。必然的に彼女がここに呼ぶとは思えない。
混乱で言葉を繋げられない遥生に助け舟を出すように、皆川続ける。
「なにか、君に伝えたいことでもあったんじゃないのかい?」
「おれに、伝えたいこと…?」
菜々が?なんのために?
もしそうだったとして。あれから5年は経っているのだ。急に出てきてそんなことあるのか?
どれだけ考えても、自分の求める答えにたどり着くことはなさそうだ。
「須賀くんはこの5年間、どう過ごして来たんだい?」
「それは…ずっと、菜々のことを考えて…」
毎日、毎日毎日、あの日のことを悔やんで、悔やんで悔やんで。いつも1番近くにいたのは俺だったのに。守れなかった。守りたかった。
そういう後悔の渦がずっと心の奥底にあった。
「5年の間、ずっと?」
「…はい…」
ずっと、だ。大学の日も、バイトの日も、風呂に入ってる時も。ずっと。
でも、夢を見たことはなかった。夢を見たのは昨夜が初めてだった。
なんで…?なんであの頃の夢が出てきた?
なんでだっけ…。
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