3.晩夏

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今日の朝食は主食のこけ(、、)に、ベリィベリィベリーソースをかけたものだ。 夏のこけはちょっと固いけれど、煮こんだり、よーくたたいてから蒸すと、ほくほくして美味しいのだ。 こけに加え、太陽の元気をたくさん吸収したソースで、パワーチャージだ。 「いただきます」 宇宙クラゲの一家はみんなそろって、美味しいごはんに感謝をした。 プックンは美味しくて、幸せで、にまにました。 妹のプリンがけわしい顔でプックンを見ている。 そんなに変な顔をしていたかな、とプックンはあせった。 プリンが見ていたのはプックンではなかった。 プリンの視線が向けられた先は、プックンの頭を通り過ぎて向こう側だ。足りないお皿を取りに行ったパママンパとパトリック姉さんを見ていたのだった。 プックンはほっとした。でも、パママンパも姉さんもとてもこわい表情をしている。 会話のじゃまをしない方がいいだろうと思いつつ、プックンの身体は勝手にキッチンの二人に近づいていった。 「パトリック……本気なの?」 パママンパの腕が20本全部、小さく震えていた。 「僕は本気だよ。パママンパ」 「どうして?あなたが家族をつくったとき住むのにちょうどいい星を、私はずっと探していたのよ」 「いらないよ、家族なんか。僕は一人が好きなんだ」 パトリック姉さんは平然として言った。 「僕の人生だ。僕のやりたいようにやる。いくらパママンパにだって指図なんかされたくないよ」 わかったわ、とパママンパは声をも震わせた。 「私がおせっかいだったのね。みんなみんな、私が悪いっていうのね!」 「ちがうよ、そんなこと言っていない。ただ、僕は……」 姉さんがあわてて弁解をしようとしたが、おそかった。 パママンパは涙を後ろに流しながら走っていってしまった。 バタン、と食堂のドアが閉まる音、そして廊下をかけていく音。 プックンには、それがパママンパの心の叫びのように聞こえた。
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