1.初夏

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「プックンのお顔、今日のシチューみたいね」 143番目の子供、プリンがませた口調で言った。 プックンは、にまにましながら、 「うん。ぼくね、とっても幸せなんだ」 と言った。 プリンが口をへの字にする。 「プックンは毎日そう言うのね。かわってる!だって幸せって、お誕生日とかお正月とか、とくべつな日に感じるものでしょ?」 「まぁまぁ、そう言うなよ、プリン」 上から5番目の姉貴が口をはさんだ。 「プックンにとっては毎日が特別なんだ。確かにちょっとヘンだけど、変わっているところがプックンのいいところだよ」 姉さんはプックンにウインクをした。 パトリック姉さんは周囲をよく見ているんだなぁ。 プックンは感心しながらてれて赤くなった。 プリンは納得のいかない顔で、へんなのー、と言った。 プックンたちはたった一人のパママンパから生まれてきたけれど、みんな顔も性格も、まるで違う。 例えばプリンはおませさんだけど、ちょっとこわがりだ。 パトリック姉さんはマイペースで、他人も自分も同じように尊重する。 プックンは……、プックンの長所は、何だろう? 姉さんが今、プックンは“変わっているところがいい”と言ったけれど。 具体的に何がどう“いい”のかプックンには分からない。 (まあいっか。今すぐに分からなくても) プックンはシチューを山盛りおかわりすると、にこにこしながら、すべて平らげてしまった。 具はほとんど入っていなかった。 プックンは気にしなかった。 だってスープには、パママンパの愛情がしみわたっていたのだ。
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