2.盛夏

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ごめんね……、とパママンパはくり返しつぶやいた。 「パママンパね、この季節になると、……このお花を見ると、どうしようもなく悲しくなるの。さみしくって、苦しくって……。いけないわよね。プックンたちが、家族がいるのに、そんなことを思ったら……」 「そんなことないよ。どうして、いけない、なんて言うの?」 プックンはびっくりして、パママンパの腕の中から、パママンパを見上げた。 パママンパは愛おしそうにプックンのほほをぬぐってくれた。 「少しだけ、座って、お話ししましょうか……」 プックンはパママンパと一緒に、お花畑の真ん中に座った。 ブルーライトフラワーの光がプックンの周りで楽しそうにおどっている。 なんだかまるで、宇宙の中心から星をながめているみたい。 パママンパは、何から話せばいいかしらね……と言った。 「パママンパね、プックンが生まれるずっと昔、好きな人がいたの。大好きだった。子供のころから。……そう、ちょうどプックンと同じくらいの年のころかしら、将来一緒に暮らそうね、って約束をしていたの」 パママンパは当時をなつかしむようにきゅっと目を細めた。 「彼女はね、パママンパと二人だけで暮らしたいってずっと言っていた。パママンパはそれでもいいよ、って言ったの。そうして、私たちは結ばれた……」 パママンパはここで一度言葉を切った。 それで?とプックンはパママンパをせかす。胸があんまりドキドキするものだから、体全部が心臓になってしまったのではないか、とプックンは思った。 パママンパはゆっくりと言葉を選んで話をしてくれた。 「それから、二人は楽しく暮らしたわ。でも……、でもね、パママンパはどうしても、どうしても。プックンたちに会いたいと思った」 プックンはかたずを飲んで次の言葉を待った。 「彼女はすごく怒ったの。うらぎられた、って。出て行ったわ。それきり、その人とは会っていない……」
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