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怜奈は電話越しに素っ頓狂な声を上げた。――あまりの大声なので,スピーカー越しに思いっきりハウリングしている。
「ちょっと怜奈,あんた興奮しすぎ!」
未歩は笑ったけれど,実は彼女のテンションも上がっていた。
何せ,今までこんな高額当選はおろか,一万円以上の金額を当てたことすらなかったのだから。
『ねえねえ,お姉ちゃん!今すぐ換金しに行こうよ!』
「あのねえ。あたし,今から仕事だよ。あんただって今日講義入ってるんじゃなかった?」
未歩はPCを閉じて,スマホの向こうの妹に言った。
『あっ!?そうだった……』
怜奈,舞い上がりすぎ。――未歩は吹き出した。
「……じゃあ,お昼休みに待ち合わせして一緒に換金しに行こう。午前の業務が終わったらLINEするから」
『うん。じゃあお昼にねー♪』
歌い出しそうに言ってから,怜奈が電話を切った。
「さてと,あたしもそろそろ行かなきゃ」
未歩はスマホとPCをバッグに突っ込み,マンションを出た。
――この数時間後,当選金の分け方を巡って大ゲンカになるとは夢にも思わずに……。
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