「好きなものの話(舞台編)」

1/1
前へ
/36ページ
次へ

「好きなものの話(舞台編)」

ここからは暫く 私の好きなものについて淡々と話していきたいと思います。 私は、舞台が好きです。観ることはもちろん、その中の一人として加わることも。 具体的に何が、と言われると・・・まぁ、その雰囲気だったり、内容だったり、楽曲だったり、お客さんの反応だったり・・・本当に色々です。 多分 雰囲気が好きなのだと思います。 一人ひとりに「役」があって、その役が必ず話の一部になっている。その「役」が、普段の自分と重なるときもあるし、全く違うときもある。おしゃべり好きの小間使いかもしれないし、憎めない世間知らずな流れ者かもしれないし、自虐かつ内罰的な作家かもしれないし、人ではないかもしれないし、殺人鬼かもしれない。 だけど、その「役」として存在している瞬間・何かを話している瞬間・動いている瞬間・・・その瞬間は、「ここにいて良い」と、場所が与えられます。確かに、そこに存在している。それが例え、生きていたとしても、死んでいたとしても。 次に、好きなジャンルについて。 基本 自分が心惹かれたものは隔たりなく見ます。ミュージカルでも、朗読劇でも、2.5次元でも。 強いて言うなら、一人劇や二人劇、比較的シンプルな舞台設計の作品が好きです。 白黒基調の世界で、数人の人間が入れ替わり立ち替わり違う人間になる。 素足で床を踏む音・箱に跳び乗る仕草・身体表現・・・そして、さっきまで恋人だった人間が同僚になって上司の愚痴を言い合い、友人になって互いの傷をなめ合い、通行人になってシュールなツッコミを入れ、また恋人になって抱きしめる。 惹き込まれるのです。好きなのです。 話の内容も、ハッピーエンドも好きですが、「メリーバッドエンド」「ブラックコメディー」「考察が必要な話」「トラジックコメディー」など、少しだけ闇を纏った話も大好きです。 私自身、執筆活動でも、そういった作品を多く書きます。 闇って聞くと、「メンヘラ」「病んでる」「教育に悪い」・・・暗いイメージがあると思いますが、そのイメージを含めて好きですね。例えば、Aさんが恋人を殺して土に埋めるシーンがあるとします。その行為自体は犯罪で、当然罰せられるものですが、Aさんの表情を見ます。泣いているかもしれないし、怒っているかもしれないし、能面かもしれない。Aさんの背景に何があったのか、その顔にどんな気持ちがうごめいているのか・・・怖いのに悲しい、怖いのに切ない。 また、全く別の話では、起きていることは不条理で恐ろしいことなのに、登場人物たちはそれを通常運転、ときにユーモアを交えながら話している・・・。 『一筋縄ではいかない混沌とした空間』に、私は芸術的な魅力を感じるのです。 最後に、もし私が舞台に加わるとして、演じてみたい役柄について。 これは結局私が決めることではないとは思いますが・・・もし、希望を言うのであれば、「何人もの人格を持っている人」を演じたいです。 例えるなら・・・ダニエル・キイス作の『24人のビリー・ミリガン』『五番目のサリー』に出てくるような。(お話が気になった方は、ぜひ調べてみてください。) たくさんの人間が、1人の中で笑い、暴れ、途方に暮れ、また笑う。 なりたかった自分・無意識にそうなってしまった自分・気づいていない自分・歯止めが効かない自分・・・たくさんの人格を行き来する中で、その「役」として舞台上で生きていきたい――― そんな望みがあるのです。 いつか、自分の足で芸術に触れてみたいです。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加