「猫心 親心」

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「猫心 親心」

(ちょっと好きなものの話をお休み・・・ただ猫も大好き) 「モンスターペアレント」という言葉は、度々耳にする。教育現場を主に、あまりにも理不尽・無理難題を押し付ける親の例え。 学校の先生だって忙しいんだよ・・・そんなの家庭の問題だろ・・・親の務めを果たしているのか・・・数年前なら、少し冷ややかに受け流していたかもしれません。 私の話をします。 一時的に猫を預かっていた時期がありました。まだ生まれて半年も経たないであろう仔猫です。最初こそ悪戦苦闘しましたが、やっとトイレを覚え、私がいても動き回れるようになりました。 意外と上手くいっている ――― そう思っていました。 ある日、餌をいつもより多くよそってしまった私は、食べすぎてはいけないと少し餌を取り、一時的に袋の中に入れて置いておきました。いつものように餌を食べる仔猫を見届け、私は夕食のためにその場を離れました。 一時間後、再び仔猫の元を訪れた時です。 私の目に、破かれたビニール袋が飛び込んできました。入れておいたはずの餌がありません。 何が起こったのか瞬時に把握しました。 そして、全身から血の気がサァ―っと引きました。 食べてしまった。餌と一緒に、この子はビニール袋のかけらを食べてしまった・・・ 「どうしたのっ!?食べちゃったの!?」私の問いかけに猫が答えるわけないのは分かっているのに、私はきょとんとした仔猫に何度も聞いていました。 その子が行きそうな場所にビニールのかけらが落ちていないかどうか、這いつくばって探し、どこにもなく絶望しました。 どうしてビニール袋に入れてしまったのだろう。どうしてあのままにしてしまったのだろう。全ては自分のミスであり、自分をとことんまで責めました。 呼吸困難・・・腸閉塞・・・想像したくもないことがどんどん溢れて押しつぶされそうになりました。 仔猫に異変がないか、神経を研ぎ澄ませて過ごしたことは今でも忘れません。 その時、ふと思いました。 子どもを育てる時も・・・こんな気持ちになるのだろうか。 右も左も分からない子育て、上手く行かない毎日。 子どもが病気になって、怪我をして、自分の知らないところで苦しんで、悲しんで・・・どうしたらよいのか分からず、焦り、時にぶつかり、時に周りに当たり、時に孤独になり・・・・・・もちろんペットと人間の子供では色々違うことが多いけれど・・・ 確かにあの日、私は焦った。 確かにあの日、私は自分を責めまくった。 世のお父さん・お母さんはすごいと思う。 色々な環境はあっても、子どものために動き、修羅場とも言える壁を乗り越えているのだから。 もちろん、親子に関する悲しいニュースや問題は後を絶たない。 ただ・・・私は世のお父さん・お母さんのように修羅場を乗り越える力や覚悟を持つことはできるのだろうか・・・仔猫を見つめながら、胸がキュッと痛くなったのを覚えています。  
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