赤い箱<チョコ味>

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赤い箱<チョコ味>

【郷田と沖】<2019/11/11>  テーブルに赤い箱が置かれている。 「どうしたのこれ」  仕事が終わると家へと一直線な郷田が、寄り道をしてお菓子を買うなんて珍しい。  お菓子を食べるならご飯を腹いっぱい食べたい、そういうタイプだからだ。 「帰るときに佐木さんから渡されました。理由がわかりませんが、二人で食べるようにと」 「そうなんだ」  学生時代に友達とシェアしたなと懐かしくなる。  気になる女の子にゲームをしようと持ち掛ける友達もいた。 「一太君、これでゲームをしたことない?」  二人が向かい合わせに一本のポッキーを端から食べていく。  先に離したほうが負けで、最後まで食べ切ったら二人は口づけをする。 「俺はしませんが、駿也さんはしたんですか?」  沖を見る郷田の目が座っている。  それは口づけをしたかどうかと聞きたいのだろう。  女子とはしたことはないが、男友達と一度したことがある。 「負けたから」  むろん、最後までいくことはなかった。 「だから、一太君と勝負しようかな」  とパッケージを開き、一本取り出した。 「俺は負けませんよ?」  まるで獲物をみるかのような鋭い目。  食べ進んだ先に待つのは、きっと。  身体がぞくぞくとする。怖いのではない。喜びでだ。 「俺だって負けない」  両端を互いにくわえて、いざ勝負。 <了>
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