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「初めまして。園芸部部長の島崎花奈です。これからよろしくお願いします!」  初めて会った日。島崎さんは、花が咲くような笑顔を私に向けてくれた。  新卒新任の私がいきなり部活の顧問を言い渡された時は、ブラックな学校に来てしまったかとちょっぴり後悔したけれど、昨年までの顧問の先生が腰を悪くしてしまったのが理由らしい。  この学校は、生徒全員が何らかのクラブに所属しているため、クラブ数がすごく多く、腰を悪くした先生も、別のクラブの顧問になった。  たった1人しかいない園芸部員。3年の島崎さんが卒業したら園芸部は無くなってしまうから、新入生獲得に躍起になるかと思いきや「好き勝手できるから、先生と2人でいいですよ」と笑った。  部長はそんなで、顧問の私は慣れない授業でバタバタで。その内新入生の部活登録期間は終わってしまい、島崎さんの希望通り園芸部は2人きりになった。 「先生。ゴールデンウィークの予定は?」 「えっ?」  島崎さんが、雑草を抜く手を止めて私を見る。  授業の準備などの頭に浮かんだやらなければいけないこと。それ以上にやりたい家でダラダラリフレッシュ。 「特にないかな?」  教師のプライドが邪魔をして、家でダラダラとは言えなかった。 「じゃあ、苗植えはゴールデンウィークにしましょう!」 「えっ?花の苗植え?」 「野菜ですよ、野菜!」  折角のダラダラリフレッシュウィークが潰れてしまう。少し悲しい気持ちになった私を励ますように 「収穫したら、食べられますよ」  島崎さんは、太陽のような満面の笑顔で言う。  私は島崎さんの笑顔と「食べられる」の殺し文句に完敗した。
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