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会話をする夢を見た。
それは遠くから語りかけてくるようで実はすぐ足元にいて、声はぐわんぐわんと反響して拡散してしまうからあんまり聞こえないのだけど、わたしがもっときちんと聞きたいよと言うと湧き立って熱のかたまりみたいになって、それは、まるで意味ある言葉のように切り取れたりもした。
つまりそれは欲するということ。欲するということは渇くということ。
今だって彼女は絶えず水を飲んでいる。
枯渇しそうな精神は手を伸ばすように感情を求める。
たとえばそこにつめたく生き生きとした塊があったとしたら、あたためずにはいられない、彼女はそういう美しい人だ。
彼女は喜んでいた。
この夢は、わたしがせかいを愛しているのだという印、せかいが応えてくれた証なの。
その声は低く擦れていて、ときおり力んだためかかすかに息が震えた。
内々でいくつかの事項が(それを感情と呼ぶのは浅はかだと思うけれど)拮抗していて、そのこすれ合うところに振動は端を発している。
それを増幅させるように体を揺する。その拍に、原子たちも収斂していく。
壁に背を預けたまま腹を抱えるように手を回して熱っぽく潤んだ瞳を睫毛に隠しながら、とろとろと言葉を零した。
それは矛盾を紐解いて編み上げるための祈りだった。
いいえ、これは祈りにも満たないただのお願い、ただのわがまま。
生きるとは死ぬことだから、生きているなにかを望むべきでないのは分かってるんだけど、でもなんだか物足りなくて、どうしたらいいのかなって、思う、けど、やっぱり生命じゃなきゃこの隙は埋められないのだろうか。
わたしは愛する何かが欲しいのだと思う。
愛する対象。
もちろん今まで生まれたすべてのものたちのことも愛している。
愛しているけども、どこかしっくりこない。
きれいなものやとうめいなものでなくてもいいけど、なにかあたたかみのあるものがいい。
つめたいものは怖い。
それだって平等に愛すけれど、どうしても死に近いような気がしてしまう。
動きと温み、それと意思あるものが、巡り続けるせかい。
たぶんそういうものをわたしは望んでいるんだと思う。
だからきっと、次目が覚めたら、よりあったあらゆるものが動き出すよ。
それで完成?
分からない、明日になってみないと。
大きな腹を抱えてゆらゆらと東の壁に近づいた。
窓を見上げる。
今は夕暮れ?
これは朝焼け。少しだけ色が薄いでしょう。
ほんとうだ、これがわたしの嫌った世界なのね。
美しいと思う?
生きていけないと思う。だってわたしは今も、これからも幸せだもの。
あやすような体の揺れを保持したまま彼女は目をつむって意識を空中に逃がした。
白々しい明るさが満ちたので彼女は壁に溶け込んでしまうようだった。
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