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せかいの胎動が聞こえる。
動くものたちが巡っている音。
これからかみが出来るのよ、これが最後。
動くものたちはきっとそれを望むから、自力で作り出すのだと思う。
彼らはあなたのことを知っているの?
どうだろうね。
もしかしたら、あなたが神なんじゃない?
わたしはなりたくないなあ。だってわたし、生むことしかできないもの。
夜更けから降る雨のばらばらと鳴るのに負けないくらい、強く鼓動の音が響いていた。
ベッドの上で仰向けになって漂う湿気の匂いに鼻を引くつかせながら、こちらへ、と手招き、その手で私の手を握る。
わたしきっとどこかであなたを知ったんだと思う。だから、ありがとうね。
彼女はひらいた。身のうちのすべてのおおきなひろいものを開示した。
永遠の始まり、
延び広がる規定のない空間、
照らし続ける闇、
死のない意思たち。
それらはすべてが美しくて、まるでユートピアのよう、あるいは完全な球のよう。
時間の流れはゆったりとしていて、万物にとって平等。
あらわれる光は薄くもやのように地平を覆っているため、暗がりはそのときの気分で挟み込まれる。
つまるところ、白く煤けたようなその空間はすべて光の顕在であって、生まれたものものはその真実らしさを一身に受けているのだった。
私が見ていると徐々に色がつきはじめた。
鮮やかでなく、暗くもなく、のっぺりとした色彩で空は薄青に、地面は青にすこし緑を混ぜたような柔らかい色になった。
じんわりと染み出すように、内奥から溢れ出すように染まっていくそれはところどころに影の兆しがあり、黒は存在しないという意思なのか、青みで輪郭が縁どられていった。
それと同時にものものの形が表れ始めて、あっというまに個の形をとったかと思うとゆらりとひと揺れしてから動き出した。
それは風が吹いてざわめき立つすすき畑のようで、私はそのざわめきを遠くから眺めている。
めくるめく展開を彼女も共に見ているので、私は目を輝かせてそれを見る彼女も含めて、すべての物事をほんとうに遠くから眺めているのだった。
わたしとわたしに似たものたちが顔を見合わせて出会ったとき、せかいは満ちた。
大きなうねり、たくさんの意思が満ちた。
私は彼女の手をほどいた。
わたしは引きずりこまれそうになってあなたを振り返ったけど、あなたは優しく手の甲を撫ぜて、開いてしまった。
私は彼女を役割へと送り出さなければいけなかった。
わたしは、こんなの知らなかった。
たくさんの声、
叫び、
祈り、
かかえきれず、
あふれだす、
はぜる、
それは、
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