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銀胡達が行ってしまってから、豊月さんと天太君も玄関に向かった。
『ご馳走様、アンタの料理もなかなか美味しかったわ…………まあその、あんまり気を落とすんじゃないわよ?』
豊月さんは目こそ合わせないが、明らかに私を心配してくれていた。
『本当に美味かったっす。一ノ瀬さんにも伝えておきますね……じゃあまたな、シュン!』
『うん!』
二人を見送った後、私は残された洗い物を済ませようと台所に向かった。
何もしないでいるのが怖かった。
ぼうっとする時間が出来たら、私はきっとまた考えてしまう。
(……何か作業があった方が気が紛れて助かる)
いつもは面倒な洗い物がある事に、今は感謝すら覚えた。
『夏也……大丈夫?』
私が皿を洗っていると、シュンが気遣わしげに、台所の入り口から覗いてきた。
『……やっぱり、結構寂しいよね』
彼に強がる必要はないだろう。私は素直に頷いた。
『……うん』
シュンは黙ったまま私の隣に立つと、洗い終わった皿を拭き始めた。
暫くそうしていると、またシュンから話し始める。
『……あのね、夏也。俺、今回の事で色々考えたんだけど……』
目線は下を向いたまま、手は止めずに言葉を続ける。
『奏汰に……話そうと思うんだ。俺が本当は妖怪だって事』
『え!?』
私は思わず皿を取り落としそうになる。
奏汰も今回の食事会に呼んであげたかったのだが、豊月さんも来るし、神界の話も出ると思ったので、敢えて呼んでいなかった。
今回は色々と手伝ってもらったし、奏汰だって最後にこむぎに会いたかっただろう。
巻き込まないようにとか、説明し辛いからとか、勝手な言い訳を作っていたのは私の方なのかもしれない。
『……ごめん。友達にいつまでも本当の事を黙ってるの、辛いよな……』
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