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私達が立ち話をしていると、店の奥からパンを沢山乗せた籠を両肩に担いだ、大柄な男性が現れた。
筋肉のついた太い腕は、まだまだ沢山のパンを運べそうだ。
『力仕事向いてそうですし、本当に良かったっすよね……』
『うん、子どもの為にもちゃんとした仕事に就いてくれて良かったよ』
銀胡は約束通り盗賊稼業から足を洗い、真白さんの店に住み込みで働くようになっていた。
『あれ? 夏也また来てたの? 天太まで!』
入り口の扉が開いて、顔を覗かせたのはシュンだった。
『先生、こんにちは!』
その後ろからは奏汰が顔を覗かせる。
『二人とも今日は何して遊んでたの?』
『図書館に行ってきたよ! お腹空いたからパン買いに来た!』
『妖怪が焼いてくれるなんて、こんな素敵なパン屋さん他にありませんし……』
『奏汰!』
シュンはしーっと人差し指を立てる。
『あっ、ごめん……!』
奏汰に妖怪である事を打ち明けてから、シュンは一層彼と仲良くなり、最近では一緒に外に遊びに出掛けるようにもなっていた。
『夕方までには帰るから!』
『うん、楽しんでおいで』
二人は楽しそうに並んでパンを選び始めた。そして、店の奥を覗くと、窓に向かって手を振る。カウンターの裏には、奥の事務所が透けて見えるガラス窓があった。
その窓越しに、麦わら帽子を被った幼児が、ちょこんと座っている。
彼は此方に気付くと、目を輝かせて飛び上がった。私は少しだけ心配する。
あんまり跳ねると帽子が落ちて、可愛いふわふわの三角耳が見えてしまうからだ。
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