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第一章 情熱
「着信、気づかなくて済みません。」
ユウキ先輩の姿が消えた後、
アキヒトはハルカさんに謝ると
葵さんの手を振り払った。
「葵さんも、今日は話を聞いてくれてありがとうございました。」
「なんや、冷たいやないの。」
「ご期待に沿えず、すみません。」
皮肉っぽく言う葵さんに、彼は慇懃に返す。
「葵さんは可愛いし、イイ女だと俺は思いますけど
俺はハルカさんと付き合ってるんで。」
「……わかったわよ。」
葵さんは不貞腐れたように言った。
「おとなしく帰る。帰ればいいんでしょ。」
彼女が捨て台詞を吐いて、二人の元を立ち去ると
ハルカさんとアキヒトは二人きりになった。
しばらく無言で立ち尽くしたあと、
アキヒトはハルカさんを強く抱きしめる。
深夜と言う時間でもないので人通りは多かったが、
往来の真ん中でアキヒトは彼に口づけた。
ハルカさんは驚いた顔のまま、されるがままになっていた。
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