第二章 語り合い

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ

第二章 語り合い

アキヒトが葵と会っていたころ、 ハルカがユウキ先輩に連れられて行った店は 大人の雰囲気があるジャズバーだった。 「ええ店やね。」 「もしお前と飲めるなら、ここに来たいと思ってたんや。」 彼は嬉しそうに言った。 ハルカと付き合いだしたときのような笑顔で、 少し懐かしく感じている。 二人はベルベットの椅子に腰かけると、 ライムジュースの入ったジンベースのカクテルを頼む。 「な、お前あんな若い子が好みやったんか?」 乾杯した後で聞かれ、ハルカは思わずむせた。 「顔赤いな、そんな顔するんや。」 からかわれる。 「うるさいな」とハルカは言いながら、カクテルに口を付けた。 確かに年下と付き合うのは初めてだけどさ。 彼じゃなきゃ、付き合ってはいないと思う。 「あの子、お前の組にいた若頭に似てるな。だからか?」 するどいな。 「まあね。」とハルカは返した。 「でもそれだけやないよ。」 アキヒトの優しさと、情熱と、思いやりと……挙げていけばキリはない。 「好みの顔やけど、顔だけ好きなわけと違うから。」 ハルカが言うと、ユウキ先輩はふっと笑った。 「お前を満足させられるんか?」 「満足どころか、身体がいくつあっても足りひんわ。」 「それはそれは、ごちそうさま。」 からかうように言われ、また赤くなった。 「ほんまに惚れてんねやな。」 「うん。」 せやから邪魔せんといてよ、僕らのこと。 と続けると、先輩は黙り込んだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!