日常

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日常

はっとして目を覚ました。 床と密着していた頬が汗と涙で湿っている。 手の甲で顔を軽く拭う。 わたしは縁側で眠っていしまっていたようだった。 いつものように夕飯の調理を済ませ、風呂を沸かし、洗濯物を畳む。 一連の仕事を終えて一息つこうと横になっていた。 普段ならば、そんなことは滅多にないのだが最近は日に日に暑くなる毎日で少し疲れが溜まっていた。 時計に目をやると、もうすぐで旦那様が帰ってくる時間だった。 旦那様が帰ってくる前に目が覚めてよかったと安心する。 縁側で寝っ転がっている姿を見られるなんて、恥ずかしいし、みっともないからだ。 ヒグラシの声が聞こえる。 蝉時雨というには、まだ小さい声だ。 夕方の涼しくなった風が心地よく素肌を撫でた。 小さな庭先には青い朝顔の鉢植えが置かれていた。 旦那様が昨日の仕事帰りに、朝顔市で買ってきてくれたものだ。 朝には大輪の花を咲かせていたが、夕方には萎れてしまった。 ぎゅっと絞った巾着の口みたいに、朝顔は力なくうつむいている。 わたしは萎れてしまった花に、慈しむように口づけをした。 ただ命を全うした花を見るだけで感傷的になってしまうのは、おかしなことだろうか。 青い朝顔を見て思い出すのは、やはり彼のことだ。 どうしても忘れがたい記憶の向こう側にいる彼。 ボーっとして物思いにふけていると、玄関から旦那様の声が響いた。 わたしは旦那様を玄関まで出迎えに行き、お風呂から出るまでの少しの間待機して、頃合いを見て夕食の準備に取り掛かった。 今日の献立は、枝豆ごはん、茄子の味噌汁、鯵の塩焼き、胡瓜の浅漬けだ。 だんだんと夏が近づいてきて、食卓に夏野菜の彩りが増えていくのはとても嬉しい。 もう少ししたらトマトやトウモロコシなんかも食べられるだろうか。 夏野菜はみずみずしくて、栄養価が高く美味しい。 スイカもいいかもしれないと思ったが、二人で一玉食べるのは多すぎるかもしれない。
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