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〜高校生編〜
昼休みの屋上。
日向は一人、フェンスに背を預け空を眺めていた。
「こんな所にいたのか」
屋上出入り口のドアが開閉される音の直後に誰かが近づいてきたと思えば。
そう言って呆れたように見下ろしてくる一人の男子生徒が、日向の眺めていた景色を遮った。
艶のある黒髪、揺るぎのない瞳。
中学から一緒で、高校の今も変わらない関係でいてくれる存在。
自分の、好きな人。
「明岐……」
思わず名前を口にすると、彼は自分の隣に座り込んだ。
「今日の小テストのせいで、疲れた……」
こちらの気持ちを知らない明岐は、無防備に横で眠り始める。
少し腹立たしいけれど、仕方ない。
この感情は自分が勝手に抱いたもの。
彼に非は無いのだから。
「……寝るか?肩貸すよ」
「あぁ」
ころんと日向の肩に頭を預けると、明岐は大人しく目を瞑った。
自分と相手は、制服の着方も生活の流れも全然違う。
彼は真面目で、日向は何かとよくさぼる。
けれど唯一譲らない、譲れないものがあった。
「お前って、何でいつも学年トップなの?」
ぽつりと明岐の口から溢れた言葉に、日向はそっと微笑む。
そんなの理由は簡単だ。
「……ナイショ〜」
学年トップを取れば、明岐は絶対にその下につく。
廊下に張り出されたランキング表を見る度に、名前が並んでいて嬉しかった。
他にも、校則を破って制服を着崩せば、明岐の目に止まり構ってもらえる。
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