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テーブルの端に設置されているボタンを押す。注文を訊きに来てくれた店員に、イチゴパフェを頼んだ。 「少々お待ちください」 また会釈を返すと、パフェが届くまでの間、持ってきていた文庫本を読んで時間を潰した。 「お待たせいたしました」 イチゴがふんだんに使われたパフェは、とても美味しそうなピンク色だった。 さっそくスプーンを手にし、一番上のイチゴを掬う。 ふと前から視線を感じてそちらに目を向けると、あの女性が僕を見ていた。目が合うと、ニコッと微笑んでくれる。僕は少し赤くなって、小さく頭を下げた。女性はすぐに読んでいた小説に視線を落とした。 気を取り直してパフェを食べ始めるが、その後もチラチラと視線を感じた。僕の顔に何かついているのか、それとも寝ぐせでもついてるのか? こっそりとその女性を見ていると、本を閉じ、備え付けのボタンを押して店員を呼んだ。二言三言言葉を交わすと、店員はその場を離れて行く。女性は楽しそうに、何をするでもなく注文品が届くのを待っている。 しばらくすると、僕が食べていたものと同じパフェが運ばれてきた。チラッと僕を見た女性は、照れたように笑って「いただきます」 と口を動かした。
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