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「そうではなくて……。その香りが、何の香りなのか気になって」 「これは金木犀です。実は銀木犀という花もあるんですよ?」 「ギンモクセイ……? 金木犀とは違うんですか?」 「そうですね……。この本、貸して差し上げます。それで調べてみてください」 「え、でも……」 僕は、差し出された本と女性の顔を交互に見る。可笑しかったのか、クスッと笑うと口を開いた。 「次に会えたら返してください。またお話しましょう?」 その笑顔があまりにも素敵で、僕は一瞬で赤面する。 恐る恐る女性から本を受け取ると、荷物を持って席を立ち上がった。 「あ、ありがとうございます」 「どういたしまして。あ、待って下さい」 頭を下げて会計に向かおうとすると、呼び止められてしまった。振り向くと、彼女も荷物を持って席を立っていた。 「私ももう店を出ます。まだ混んでいますし」 どうやら一緒にレジまで行こうと言いたいようだ。僕らは一緒にレジに並んで会計を済ますと、店を出た。 「それでは、また」 「はい。金木犀と銀木犀について、ちゃんと勉強しておきます」 「はい!」 僕は嬉しそうに手を振る女性に背を向けて、家までの道を歩いた。
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