提案

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東北地方某所にある、商社―――。 プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル。 「お電話ありがとうございます。佐藤商事の五月でございます。 …株式会社スターダストの篠原様でございますね。…はい、井上ですね、少々お待ちくださいませ」 所属している営業2部第1課は営業担当3人、事務担当3人でそれぞれペアを組んでいる担当同士が向かい合った席に座っている。 横のペア先の営業担当である井上さんを呼んで、電話を取り次ぐ。 はぁ。 営業部署のため、内線・外線に関わらず電話件数が多い。 が、電話に出るのは嫌いだ。 だって、1回電話に出てしまうと長く捕まることがあるし、 表情が見えずお互いに言いたいことが伝わりにくい。 これまでは井上さんとペアの2年目の子がいて電話を中心的に取ってくれていたが、先週急に退職してしまった。 そのため、今は隣に座っている先輩の刈谷さんと2人で電話に出ているのだが、 この刈谷さんという人は少し癖が強い人。 自分の爪に塗っている真っ赤なネイルを直したり眺めているし、 仕事は途中だろうが会議があろうが必ず定時に退社する。 …少し癖が強い人。
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