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いかにもな田舎のおばあちゃん。それもかなり高齢の。
村長の妻を見て、石田香菜はそう思った。
腰はかなり曲がっているのに、テキパキと動いては囲炉裏の前に座った石田香菜におもてなしの品を並べていく。
「凄い!美味しそう!!」
匂いだけでその美味しさがわかりそうだった。
「どうぞ、召し上がれ」
「はい!もう、実はお腹ペコペコで」
白木の器を手に取り、口元に運んだ石田香菜は手を止めた。
「これ!杉の香がする!杉のお椀ですか?」
「ほう。良く分かったのぉ」
「しかもうわ薬を塗っていませんね!もしかして…」
「わしが先月作ったんじゃ」
「おじいさん、先々月ですよ」と遠くからおばあちゃんの声がした。
「そうじゃったかの…ま、香を楽しむ器じゃもんで、何度も使えないんだけども…」
「素敵です!しかも…」
器に入ったお汁粉を一匙掬って口に運んだ石田香菜が目を細めた。
「かすかにシナモンの香…あー、このひと口を何度も味わいたいです」
それを聞いたおばあちゃんがさらに石田香菜の前へ膳を並べた。
「おー、それは良かった。あんたさんは本当に自然が好きなお方なんじゃな」
「はい!特に自然の匂いが」
村長は微笑みながら「ばぁさん、ちと久しぶりに酒を出してくれんかなぁ?」と席を立った。
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